ASPAから提供のあった論文リスト
(2005(第66回)全国大会での主要論文)



※内容を紹介するため、数本に論文の序文(アブストラクト:題名中に青文字で記載)を付しています。

著     者 題       名
Demetrios Argyriades 文明化推進への行政の役割:国家を超えた公益の増進を目指して

Yooil Bae
(University of Southern California)
Kwi-Hee Bae
(Korea Institute of Public Administration)

韓国における都市再生と不足する社会資本制度論的アプローチ

John R. Bartle
(Professor)
Jijesh Devan
(Doctoral Assistant School of Public Administration University of Nebraska at Omaha)

持続発展可能な交通システム:制度改革の可能性と課題
Cheryl A. Byers
(PhD, LISW, Assistant Professor, Social Work Program, Bemidji State University)
福祉改革:郡部非営利団体の組織インフラに与える影響
Gerald E. Caiden
(The University of Southern California)
公益増進に向けた行政の使命
Jerrell D. Coggburn
(Department of Public Administration, The University of Texas at San Antonio)
政府における随意的(アット・ウィル)雇用:テキサス州の事例に学ぶ
【アブストラクト】
 制度的保証に守られた公務員制度を、随意的(アット・ウィル)契約制度に置き換えることが、公務員採用における近年の重要な現象である。
 本稿では、随意的契約を採用するテキサス州を例に取り、随意的契約の理論や運用、効果に焦点を絞りつつ、同州の人事担当ディレクターを対象に2005年に行われた調査について報告する。
 回答者は概ね従業員の管理職に対する反応が良くなるとしている一方で、(危険を覚悟しての挑戦、内部告発、意思決定、公平性の問題への配慮といった点に関する)従業員の態度や、全体的な組織としてのパフォーマンスについては、随意的契約の効果への評価は分かれている。本稿では、行政が随意的契約制度の採用を検討する際には、より総合的に検討を行うべきであると呼び掛けている。

Barbara C. Crosby & John M. Bryson
(Humphrey Institute of Public Affairs,University of Minnesota)

行政学カリキュラムへのリーダーシップ論導入における諸課題

Maria J. D’Agostino
(Doctoral Student,Graduate Department of Public Administration, Rutgers University Campus at Newark)
Richard W. Schwester
(Doctoral StudentGraduate Department of Public Administration, Rutgers University, Campus at Newark)

討議民主主義の今後の発展に向けて:アメリカ・スピークスモデル
【アブストラクト】
 市民と政治家の間に横たわる大きな壁を乗り越え、行政に対する人々の関心と信頼を取り戻すためには、市民を審議過程に巻き込んでいくことが極めて重要である。
 科学技術へ高い信頼を置く人々や討議民主主義の支持者が期待することは、情報通信技術の活用により市民と行政の直接的かつ双方向のやりとりが促進されることであり、そして、その結果、市民の影響力が高まって政策形成における力学が変化することである。
 アメリカス・ピークスは、市民と政府の絆を取り戻すため、電子タウンミーティング(ETM)を開発した。理想的には、ETMは、市民に対して政策形成の議論に影響を与える手段を提供するものである。
 本稿では、ETMが討議民主主義の可能性をどの程度高めたかを検証。ETM『シチズン・サミットV』(2003年11月ワシントンDCで開催)の参加者の内、20人を対象に実施された各30分のインタビューを取り上げている。インタビュー結果によれば、広く一般を対象に自律的な運営で実施されるという条件を満たせば、ETMが、一定程度は討議民主主義の可能性を高めることが示唆されている。

Alexander R. Dawoody
(Western Michigan University)

神話と複雑性:複雑な理論に基づくアメリカの対イラク政策に関する考察
10 Neil De Haan
(Ph.D.)
ヘルスケア財源の分配における優先基準は何か?平等性、ニーズ、貢献への対価?
11

Lynda M. Dennis
(CGFO, CPA, MPA, PhD University of Central Florida, Orlando, Florida)

財務管理評価 アメリカの都市の能力
【アブストラクト】
 政府の財務管理能力のシステムは、サービスのレベル及び質に負の影響を与えることなく、健全な財務状態を確実にし、なおかつその状態を保たなくてはならない。どの政府にとっても、固有の事態において、これら理想的な財務管理システムの構成要素を見出すことが課題である。人的、財務、資本にとり効率的かつ経済的な用途に優先順位が与えられることにより、どの財務管理能力のシステムの実行性も増す。
 概して、財務管理能力は資金調達、現金、投資や債務管理、予算執行と資金繰りに関連した政策や手順を含む。的確な履行、これらの一連の取り組み、他の政策の監視、効率的な執行が、政府の財務と経済的な資産の保全を図る。人的資源を活用した手段を適応することにより、財務管理能力とは戦略的計画、適切な組織体制、効果的なリーダーシップと行政本位の風土をも包含するもとなる。
 政府業績プロジェクト(Government Performance Project)で定義されている管理能力に基づき、本研究ではアメリカ国内200都市の財務管理能力について検証した。財務管理能力の要因は戦略的イニシアチブ(現金、投資、債務管理、戦略的計画と代替体系)、管理システム(予算、会計と報告、内部統制)と財務リーダーシップを含む。ガバナンスと人口統計学的変数を組み合わせ、異なる規模の都市における全国的な調査結果のデータを使用し、財務管理能力指標が開発された。結果の指標は、公務執行者や他の実務者にとって、各組織の財務管理能力の相対的強弱度を図るための客観的な手法を提供する。
12

Ciaran O’Kelly
(Research Fellow, Institute of Governance, Queen’s University Belfast)
Melvin J. Dubnick
(Visiting Professor & Senior Research Fellow, Queen’s University Belfast;Professor Of Public Administration and Political Science, Rutgers University Newark)

困難な選択肢に真剣に取り組むこと:行政管理と個々の倫理機関
13

Dr Iw Ferreira
(Senior lecturer, faculty of management, Cape Peninsula University oftechnology, Capetown , South Africa)

1996年法以降の組織倫理の崩壊と構築
14

Richard K. Ghere(Department of Political Science,The University of Dayton)

行政悪の境界の監視:人々の決意と政策の意図
15

Mark A. Glaser
(Professor, Hugo Wall School of Urban and Public Affairs, Wichita State University)

新たな行政サービスとコミュニティ:地方政府を導く枠組
16

Marcia L. Godwin
 (Ph.D. Visiting Assistant Professor, Department of Public and Health Administration, University of La Verne)

再発明を再訪問:アメリカの大都市における行政の再発明
【アブストラクト】
 この論文では、行政改革を導入したアメリカの大都市の、人口学的・構造的・経済的特性について考察する。国際都市運営委員会による1997年と2003年の調査、及び国勢調査やその他出版物からのデータを引用している。1997年の調査の結果、政治的に保守的な住民が住む都市や、シティー・マネージャー制の自治体は、行政改革の導入率が高いことがわかった。2003年の調査結果分析からも、シティー・マネージャー制の自治体の行政改革導入率が高いことが判明しているが、他の地域特性と行政改革導入率との相関関係は明らかになっていない。行政改革は、比較的高い割合で導入され続けているが、経営革新により歳入増大を図る取り組みの導入率は下がってきている。住民参加を促進する改革については、小都市よりも、大都市でより導入されている。
17 Charles T. Goodsell 人々が統治するとき:外部委託についての6つの原理
【アブストラクト】
 行政が外部委託を行わず、自ら事業を実施する際は、6つの基本原則を考慮すべきであるという議論がある。これらの原則は、法律で定められた「本質的に行政的な」原則とは異なり、行政システムの構築のため憲法前文に定められた根拠に根ざしている。これらの原則につながる議論は、Carl J. Friendrich氏による、行政とは統制的に「対策を講じること」であるという考えに一部基づいている。この論文では、これらの原則の実践的な適用を説明するため、多数の事例を紹介している。
18

Mary E. Guy
(Askew School of Public Administration & Policy, Florida State University)

感情労働の実践
19

Michael Harmon
(School of Public Policy and Public Administration, The George Washington University)

マネージリズムの目的、意味、課題、二元論を解消する実利主義
20

Jack D. Kem
(US Army Command and General Staff College, Fort Leavenworth, Kansas )

イラクにおける段階W問題:社会構築
【アブストラクト】
 どのようにして軍隊は国家の基盤を破壊し、そこから民主的な機構を再生するのか。軍の意思決定のプロセスは通常、詳細な計画策定、部隊の配置、戦闘への準備、戦闘開始、和解、勝利宣言、帰還というように連続して進められる。イラク開放のための「第4の段階」である社会の再構築が抱える課題は、外交、情報、軍、経済といった広い範囲における同時進行の行動により、社会機構を構築していくという、非連続的な手法が必要だということにある。
 本稿では、イラク開放のための戦闘終了後、イラク北部における101部隊の「治安維持活動」についてのケーススタディを行う。米軍がイラクの治安を維持しながら社会機構を構築した活動についての分析にあたっては、異種の同時に起こる目標に向けた目的、手段についての認識について焦点をあてる。
 本稿の主たる焦点は、経済発展といった領域が外交や情報、軍といった別の領域に予期しない影響を与えるといった政治的制約がある中でいかにして社会基盤を構築するための計画を実行していくのかということにある。また、継続的計画、Charles Lindblomの”muddling through” やHerbert Simonの”bounded rationality” および複雑性理論に基づき、鎮圧活動の計画や実行についての評価も行う。
21

Drs Kishore Raga & Derek Taylor(Nelson Mandela Metropolitan niversity, Port Elizabeth, Republic of South Africa)

公共サービスの提供についてのアカウンタビリティと倫理の影響について:南アフリカ共和国の展望
22

Wendell C. Lawther(Department of Public Administration,University of Central Florida)

交通の革新的なサービス提供について:511(南フロリダの先進的旅行情報システム)の官民協働について
23

Larry S. Luton
(Professor and Director, Graduate Program in Public Administration, Eastern Washington University)

公共政策調査志向における定性調査の重要性について
24

Peter A. Mameli
(Associate Professor, Department of Public Management, John Jay College of Criminal Justice/CUNY)

国民の保護管理:国土安全保障専門家を教育するための統合的な手法
25

Patrice M. Mareschal (Ph.D.Rutgers University at Camden Department of Public Policy and Administration) 
Himani Bhatt
(DO/MPA Candidate, University of Medicine and Dentistry of New Jersey,Rutgers University at Camden, Department of Public Policy and Administration)

ニュージャージーにおけるホームヘルスケア政策に関する利害関係者の認識
26

Meredith A. Newman
(Associate Professor and ChairDepartment of Public AdministrationUniversity of Illinois at Springfield)

感情労働の理論的基礎:公共政策論と実際の相違 1
27

Abbas J. Ali
(Ph.D. Associate Professor, Political Science, Indiana University)
Philip M. Nufrio,
(Ph.D.Associate Professor,Metropolitan College of New York)

戦争後のイラク:前向きな変化への国力整備と理解
28 Jeremy F. Plant
( Ph. D, Professor of Public Policy and Administration,School of Public Affairs, Penn State Harrisburg)
鉄道の安全性を高めるための競合モデル
29 Dianne Rahm
( Ph.D., Professor and Director, Center for Policy Studies, College of Public Policy, University of Texas at San Antonio)
テキサスにおける再生可能エネルギー・ポートフォリオ標準(RPS)
30 Jay Eungha Ryu
(DPA, Department of Political Science, Ohio University)
州道の経費に関する革新的な資金調達手段が財政に及ぼす影響:州インフラ銀行(SIB)プログラムにおける連邦援助基金(Federal Assistance Funds)のケース
【アブストラクト】
 1995年全米高速道路システム指定法(一般法104-59)は、米運輸省が国家基盤銀行(State Infrastructure Bank、以下SIB)パイロットプログラムの設置を認可している。同銀行は、マッチングファンドと連邦アシスタンスファンドがさまざまな融資計画によって資本を再活用することと、フェデラル・ファンドを担保として直接市場から資金調達をすることによって、州がレバレッジ効果を実現することを可能とする。
 本稿では、州立の高速道路支出に充てられるSIBプログラムにおける連邦アシスタンスファンドの財政的影響について分析する。これは、国からの新しい形式の運輸の補助金である。32のSIBデータに基づいた実証的事実は、1997年において、銀行に預けられた連邦アシスタンスファンド1ドル当たり3年間(1998〜2000)で高速道路支出6.9ドル相当となることを示している。これは、データによると主にレバレッジ効果によるものである。さらに、シミュレーションは、もし外部からの財源が、特に連邦政府からのもので、その財源が資本金に還元されない場合は、標準的な融資計画において後年にレバレッジ効果が薄れる可能性があることを示している。
31

HINDY LAUER SCHACHTER
(New Jersey Institute of Technology)

経営者の考え方を変えるために専門家が用いた戦略:進歩主義期の大学についての事例研究
32

Christopher A. Simon
(Ph.D, Department of Political Science/302, University of Nevada)
Mary Van Verst
(Ph.D., Program Development and Evaluation Coordinator,Washington Commission for National and Community Service)
Changhua Wang,
(Ed.D., Unit Director,Education, Career, and Community Program Center for School, Family, and Community, Northwest Regional Educational Laboratory)

21世紀の行政の時代において行政に関する伝統的な二元論を克服する道具としてのアメリコープ
33

Michael W. Spicer
(Maxine Goodman Levin College of Urban Affairs, Cleveland State University)

政治、社会科学、行政:バーナード・クリックの思想についての若干の考察
【アブストラクト】
 本稿は政治の性質に関するバーナード・クリックの考え方を検証し、公共経営学の論者が近年支持している統治に関する科学的なアプローチに対して彼の思想が持つ意義を調べる。
 また、概してこれらの公共経営学の論者たちが、統治に内在する政治的な性質を軽視しており、その結果、価値観の対立や、私たちが自分たちを統治している方法の固有の一部となっている不確実性を無視していると論じる。
34

Margaret Stout
(Arizona State University)

天職、使命感、責任感ある公職の従事者:公務についての意欲と態度
【アブストラクト】
 公的団体や非営利的団体の正統性に危機が生じた結果、行政理論家は、技術的な専門家や価値自由な専門性、倫理的行動の規定に頼る試みを続けるよりも、規範的な解決に向かうようになっている。これらの規範についての理論は、政治哲学に立ち戻り、公務の民主的な目標を再び主張するようになっている。ニュー・パブリック・アドミニストレーションやニュー・パブリック・サービスという考え方を推進する理論家たちは、教育の場面で教えたり主張したりできる原則の集合体、すなわち、民主政下の公務のための教義を提案しようと望んでいる。これを現実に適用する場合には、公的団体や非営利的団体内の職務の多くで、かなりの程度の「公務」への意欲や献身、適性が必要となってくる。
 しかし、「公務」という言葉が何を意味するかについては、いくつもの定義や理解がある。理論をより明晰なものにするため、本稿では、奉仕しようとする「意欲」、公務への使命感を示す「態度」、それらの「実績」を測定するために考えられる方法について検討する。そして、公務の意欲、態度、行動についての理論を、ニュー・パブリック・サービスの教義と比較し、これらの理論が民主的な社会で広く受け入れられることを可能にするような共通の特徴を見出すことに努める。
 さらに、人材の採用、開発、評価を支援するために、これらの意欲、態度、行動を測定するための方法を提案し、最後に、このようなアプローチが公務に与えると考えられる利益について簡単に論じる。
35

Montgomery Van Wart
(University of Central Florida)
Kevin O’Farrell
(University of Central Florida)

組織におけるリーダーシップとそれを教育する上での課題
36

Lynne A. Weikart
(Ph.D., Baruch College School of Public Affairs, City University of New York)

けちな時代:福祉制度改革と学位取得への障壁
【アブストラクト】
 アメリカ合衆国連邦議会が採択しビル・クリントン元大統領が調印した「個人責任及び就労機会調整法」(The Personal Responsibility and Work Opportunity Reconciliation Act of 1996)及びそれに基づく補助制度である「貧困家庭一時扶助」 (. Temporary Assistance. for Needy Families) の導入は、1929年に大恐慌の間に始まった母子家庭に対する連邦政府の補助制度における最も抜本的な改革となった。PRWとTANFの可決を受け、多くの州において福祉受給者のための有益な大学プログラム創設のためのロビー活動を行う擁護団体が作られた。いくつかの州ではこのような擁護団体が、福祉受給者が4年制大学への通学を継続できるような制度の導入に取り組んだが、PRW可決後、福祉受給者が4年制大学教育を受けることの出来る制度を採択した州はごくわずかであった。
 本稿では、メイン州、ニューヨーク州の2つの州において、高等教育のための福祉政策の導入により、福祉受給者の4年制大学教育の支援を勝ち取った福祉擁護団体の事例を比較する。